第17話【1年ぶりの西表島遠征!】
いつかいつかと待ちわびながらようやくこの秋待ちに待った西表島遠征へ! 2021/11月初旬、早朝の関西空港は少し活気を取り戻し幾分かは観光客の賑やかさも。まだまだ便数制限もあり以前の様にとはいかないものの少しずつながら元に戻るのかと…?ここ数年、新石垣空港までは関東・関西間の直行便も多く便利なのだがこと西表島となると未だ空港→バス→船とアクセスは悪く少々困難ではあるが慣れてしまえば問題はないし何といっても一般の観光客は他の島に比べればまだ少ないというのが魅力。いつものごとく早朝便でも西表島に着くのは午後過ぎ。今回も僕は夫婦二人で、釣りはなんとコロナ前のシーズン中は関西から頻繁に訪れていたという玉井くんと。嫁さんは自由気ままに島を満喫し僕は玉井くんと終始釣りというプラン。…ゆったり釣るには二人くらいがちょうどいい!
西表島に通い始めて6年目に入るがいつもお世話になるのはガイド歴20年以上のベテラン「ONE OCEAN(ワンオーシャン)」の永井キャプテン。西表島の僕たちの釣りは「マングローブの釣り」「コーラルでの小物釣り」「中モノ=コーラルでのミドルゲーム」の3つ…。浅瀬で小さなミノーを使うライトゲーム以外はほぼトップウォーターの釣り…これが最高!
初日は午後3時からショートの釣り。この日永井キャプテンは関東から来たフライフィッシャーさんのガイド中とのことなので僕らは仲間のガイド、たかしくんにお願いしてカナディアンカヌーに乗り込みマングローブのTOPゲーム! 狙いはいつもたまらない魅力のジャック(=マングローブジャック)に小型のトレバリー、ナンヨウチヌやバラクーダなどなど。アウトリガーをつけたカナディアンカヌーに3人で乗り込みゆっくりとハンドエレキを回しながら大自然に囲まれたマングローブの川を上っていく釣り!今ではすっかり釣りにくくなったブラックバスTOPゲームの延長とばかり、それぞれ思い思いのお気に入りのバスタックルにトップウォータープラグで岸際を打っていくというこれ以上ないハッピーな釣り! 荒れた翌日というこの日の川は決して最高の状態と言う訳ではなかったけれど時折見せる強烈なバイトに興奮する2人。
大型魚も掛かってはバレるという日ながらあっという間に時間は過ぎて夕マズメに。「最後にあの大きな岩盤に行きましょう!」っとたかしくん。河口近くの大きな岩盤エリアを目指します。あと10分もすれば暗くなりそうな時間。岩盤沿いを流し「もうそろそろラストチャンスかな?」っと思った矢先、僕のはるか前でトレバリーらしき大きなボイル!すかさず岩盤の先めがけてロングキャストしたペンシルベイトは程よくいい場所に着水!…ワンアクション後に凄まじいバイト音とともにヒット!ロングキャストしたベイトタックルながらドラグが出る!「おおおおおー!」数分のやりとりの後上げることが出来たのは45cmクラスのオニヒラアジ!魚とルアーとタックル、三つ巴の素晴らしい釣り。笑顔で雄たけびを上げ初日の釣りはにこやかに終了。
日暮れとともに快適な定宿「まるま荘」に戻りシャワーを浴びて夕ごはん。ここ西表島のもうひとつの楽しみはこの夕ごはん!ご存知ない方は「質素な地元ごはん?」を想像するかも知れないけれどそれがどうして地元の方はもちろん、移住歴20年以上というシェフたちが様々なレストランや食堂を運営していて居酒屋はもちろん、レストランやイタリアンなど実に多彩。そのどれもがとても安くて美味しくて地元の人達や観光客で終日賑わっている。初日もガイドさん達とともに大そう盛り上がった。とにかく“居心地がいい”のである!
よく寝た2日目も快晴。いつもの通り宿で朝食をとり朝9:00から出発。今日からは島沿岸部のコーラル/リーフでの釣り。誰からでもなく暗黙と言うかなんとなくのルールが出来て、通常なら必死に起きて早朝からの釣り?となるのだろうが僕たちは毎度変わらずゆったりと朝9時から夕方5時の釣り(笑) これもゆっくりと寝れて健康的で疲れないのがいい!
気温28℃、日差しは強く晴れればすぐ日焼け、でも曇が太陽を遮ったり船の陰に入ればクーラーにでも当たってるかという快適さの11月初旬の西表島!(雨だと一気に寒くなって大変!この時期天候だけは大きなリスクがあるのでご注意!) この日からいつもの遠征釣行でもメインとなる「中モノ(ミドル)ゲーム」。=PE#3クラスに青物用や大型のシーバス用のプラグでトレバリー類や根魚類を狙うという釣り。もちろんほぼトップウォーターの釣り。この日も115mmのポッパーと130mmのフローティングリップレスミノーのみで殆ど一日を釣るというシンプルな釣り。これはフライフィッシャーでもあるワンオーシャンの永井キャプテンとこの釣りに精通する玉井くんとで始めた「最新のコーラルゲーム」のスタイル。タックルのライトさ、釣りの自由さ、そして南国のキャスティングゲームでありながらまるでバスのトップゲームをしているようなゆったり感が心地良く僕にとってはとにかく楽なペースなのがいい。PE#3クラスの釣りと言えば本州や僕の地元関西ではいわゆるオカッパリの青物タックル。このシステムで最大10kgを超すトレバリー類や回遊魚、スリットから飛び出す大型根魚(ハタ類など)をうまく狙っていくにはポイントを熟知しているガイド、永井キャプテンの手にゆだねられている。すなわち細糸でも大型魚のファイトに対応できるポイントやタイミングで場所を選んで釣りをするということ。具体的にはベストな潮位でのみ狙う障害物の少ないシャローフラットのトレバリー(もちろんそこでの最大サイズは想定済み)、掛かった後もドロップやアウトリーフ(ディープ)へすぐに誘導できるポイントでの釣りなど。従って不意な根掛かりや糸切れはとても少ない。狙う魚のサイズと狙い方、ランディングまでが完成されたスタイル=これこそが最新のスタイル。潮位と波高を読み微風・追い風で気持ちよくキャストできるアプローチはすばらしい。お昼前までのわずかな時間この楽しいキャストを繰り返す。 この日はランチタイム後に浅いリーフ内でのライトゲーム(小物釣り)と食後のシュノーケリングも楽しんだ。ライトゲームはPE#1のライトロッドタックルに5cmのミノー、これをキャストしただただ巻いてくると次々に色とりどりの小さなファイターたちが掛かってくる。僕のような釣り好きの大人はもちろんのこと、この釣りは是非初心者や子供たちにもやってみて欲しい!(全国のお父さんお母さん、子供たちと一緒にこのコーラルの小物釣りを是非っと思います。ホントに!)また沖合の小さな岩礁まわりのシュノーケリングも最高! 釣りをしてランチを食べて少し泳いで昼寝…。午後も中モノ狙い…のはずがまさかの急な風向きの変化で海が荒れてきたので早めに終了。この日は最後に玉井くんのハタと僕には長さ太さともに最大クラスのダツが!(笑)
2日目も楽しい夕食を済ませたっぷりと寝て3日目!この日は潮の加減もあって朝は10時からのスタート。天気は快晴・微風!…ついにこのタイミングが功を奏したのか1stポイントでは潮も動き始め「いかにも出そう!」な雰囲気。そしてすぐのファーストバイトは玉井くんに!わずかなシモリがあるリーフのシャロー。なんと掛かってきたのは大型の根魚!(アタックやバイトが見えるところがまた凄い!)3度も小さな根をかわしさぁこれからラストファイトっと思った矢先のバラシでルアーを回収(残念!) その直後、僕のポッパーに猛然と数尾のトレバリーの群れがアタック!水深2mほどのシャローで数尾のトレバリーがポッパーを奪い合いう様は圧巻!大きな音と水柱の後に一尾がフックアップ!その後一瞬フックアウトしたもののスイッチの入ったトレバリーの勢いはすさまじくすぐに追い食いし今度は完璧にフッキング!渾身のファイトの末、目に入ってきたのは5kgクラスのカスミアジ!カスミアジもこのサイズになれば威風堂々、なかなかの威圧感!高い操船技術と短いファイトタイムで無事ランディング完了!ランディング後はすかさず海水をかけ写真を撮り手早くリリース。今回の一番の大物となった!
4日目は当初の予定通りこの時期まさかの寒波到来?の予報とともに海はシケて釣りは無し。ゆっくりと島で過ごし午後の船で帰路に就いた。
わずかな天候の差で夏にも冬にもなる晩秋の西表島釣行であるが永井キャプテンからは「タケダさんモッてますね!」っと冷やかされるように今回もほぼ晴天での釣りが出来たことに感謝!このPE#3クラスのキャスティングゲームはもちろんはり(フック)にもとても優しいことも付け加えておく。今回もマングローブ内でのST46-STX45ZNシリーズ、コーラルでのSTX58やシングルフックの損傷は皆無。ダイナミックな釣りではあるものの、人にも魚にも環境にも優しく楽しめる釣り。
僕がトレバリー釣りを始めたのは遥か30年以上も前。国内GTゲームはその後急速に盛り上がりあっという間に「力まかせの釣り」となってしまったので僕は手をこまねいて逃げるように他の釣りへ…! タックルひとつとっても当時の不便さとは比べ物にならない今の釣り。しかし残念ながら今やもう30年前のパラダイスは存在しない。これからは例え一個人の釣り人であっても海を守り見つめながら楽しまなければいけない。また大物釣りはともかく今回も大いに楽しんだリーフでの小物釣りは是非子供たちに楽しんで欲しい!と心から願う。子供たちや初心者が日中これほど気楽に自由にプラグひとつで楽しめる釣りは残念ながらもう殆ど残されていない。「南国なんてムリムリ?」っと嘆く大人たちも釣り人であれば是非一度トライしてみて欲しい。This is the lure gameである! そして自身、最新のコーラルゲームと位置付けた中モノ(ミドルゲーム)。この釣りも是非楽しんでいただきたい。世界遺産登録がされた西表島、この先はどう変化するか不安もありつつ見守っていきたいが釣りだけはこのままでいて欲しい。もちろんこの先の様々な環境規制、C&Rの実施や資源保護など釣り場(僕たちが楽しめる釣り)を守るために永井キャプテンほか島の有志の皆さん達にも是非取り組んでいただきたい。「ゲームフィッシュは出方が命」とは僕の釣りのメインコンセプトであるがここ西表島は正にその通り。気楽に楽しく遊べる釣りこそが本来のコーラルの釣りだと思う。
プロフィール…武田栄(たけだ・さかえ)1967年大阪市生まれ
カルティバフィールドテスター /Go-Phish代表/ 釣り研究家
幼少期の釣りからルアーに目覚めバスフィッシングはもちろん、10代の頃よりいち早く海のルアーゲームに精通、その後様々なスタイルを構築。20代では釣りと同じく楽器(ドラム)演奏にも没頭(2000年ビクターエンターテインメントよりメジャーデビュー)。現在は釣りとともに地元関西の個性派グルーヴァーとしても活躍中。関西最古参SW釣りクラブ会長、老舗ルアーメーカー勤務を経てプライベートブランドGo-Phish(ゴーフィッシュ)を設立。自身の開発アイテムはもちろん様々な釣具メーカーとの企画人気アイテムも多数開発。雑誌メディアでもおなじみ愛称はタケちゃん。その明るい人柄にファンも多い。趣味は「おしゃべり」。合言葉は「ゲームフィッシュは出かたが命!」「楽しくなければ釣りじゃない」