第3話【ルアーのメバル釣り】
「僕も得意とする大人気のライトゲームから…。」
メバルに始まった海の小物釣り(=ライトゲーム)はチヌにアジ、小型回遊魚から根魚全般までと今や海釣りの主流のひとつ。「手軽に楽しめる」という触れ込みから入門者も多くまた食味の面からもアジ(アジング)などは人気の的。もう25年以上になるけれど僕がメバル釣りを始めた経緯は「スズキ釣りの合間の釣り」で始めたこと。そして何より「細い糸と小さなハリ(ジグヘッド)」の登場があっての事だった。
そこからは試行錯誤の連続。毎夜の釣りはもちろん、当時の熱狂的な釣り雑誌編集者も加わって日々新たな道具(タックル)やメソッドを試しておりました。
もちろん最初はジグヘッドとワーム。2ポンドのフロロラインに1グラム強のジグヘッド、そして初期のメバル専用ワーム。ロッドはトラウトロッドを工夫したのちすぐに専用ロッドも発売されて…。専用ロッドの登場に合わせて軽量でライントラブルも少ないリールが多く出揃ってからはもう釣れに釣れた時代(タケダ式フロートリグもこの頃メディアで紹介)。しかしながらこの頃はおそらくルアーでメバルを釣る釣り人(アングラー)はメバル釣り師の5%くらいではなかっただろうか(笑)? 当時はまだまだエサ釣りが主流で僕もわずかにかじっているけれど、エサ釣りのそれは実に面白いこと。春の凪の夜、青イソメやシラサをつけたハリにふんわりと電気ウキを流して釣るメバル釣りのなんと楽しいこと!ウキがスーっと沈み、その後のキュキュキュンっと小気味よい引きはほかの釣りにも代えがたい楽しみ。初心者の皆さん、先に言いますよ!より確実に魚を釣ろうと思えばそりゃぁエサ釣りであります。
「専用タックルの凄さ!」
メバルがルアーでよく釣れるとわかって数年ほどが経ち釣りギョーカイ内でも「ルアーのメバル釣り」(ちなみに僕は未だにメバリングとかアジングとかエギングとかチニングとは言いません。)が認知され始めるとともに専用の道具が出始めます。もちろん今のようにどこもかしこも?という訳ではなく先鋭のメーカーから手探り状態ながら「メバル用」というものが順に登場。そして未だド定番、オーナーばりのメバル専用ジグヘッド「メバル弾丸」も登場。細くなったフロロラインと共にこのファインワイヤー+ロングシャンクのメバル専用ジグヘッドはまたまた抜群の釣果をたたき出します。
当時はまだ大阪湾でも常夜灯のすぐ下には15~18cmほどのメバルの群れがたくさん居て
ルアーを通すと、追い方やくわえ方、反転する様やスレてくる様子までひと通り目で確認することが出来ました。これまでメディア上でも公開してます「タケダ式」と呼ばれるいくつかのスタイル(釣法)がありますが、基本的にその多くはしっかりと目で見たものから導いた手法ゆえ、嘘偽りはありませんのであしからず。(魚は驚くほどシンプルに生きてます。)
「そして進化は続き…」
ルアーによるメバル釣りが定着し今では当たり前の細いPEラインも一気に普及し始めこの頃からスズキ(シーバス)、イカ(エギング)などと共により先鋭的な釣法と細分化が始まります。ライトゲームではチヌが、そして今や大人気のアジ(アジング)がにわかに注目され始めます。チヌは浜松(浜名湖)と広島から、アジは同じく広島そしてボートでは静岡や千葉あたりから始まったと認識してますがどちらもその直後には関西にも伝わり僕もチヌやアジのタックルや釣り方の開発に挑みます。「タケダさん、アジなんか釣って楽しいの?」っとは(世界初の)アジワームを販売し始めていた頃に多くのギョーカイの方から言われたセリフ。「知らんよ!そのうちエライことになっても?」っとの予言通りその後全国いやっ世界を席巻することとなります。アジの特徴は「ほぼ全国に居ること」「食べるエサの幅が多いこと」「釣るには活性の高低差が激しいこと」。
ベイトフィッシュから虫類、浮遊するプランクトンやクラゲまでを常食するアジ。これが地域や時期によって変わるのだからそりゃー釣り師としてはやりがいがあります(笑)。しかも従来のオカッパリでのメバル釣りでは少なかった「フォール」(正確にはゴカイ類などがごく自然に水中を漂うイメージ)での釣りが主となることとメバルや根魚とは違い底を叩くことはないアジの特性からより繊細な道具立て(タックル)の進化につながります。具体的にはフロロラインは2ポンドから1ポンドが標準になりその後は超ファインPEやエステル系ラインの普及などへ繋がります。必然的にロッドもリールもより軽量化、そしてそれらの伴う様々なものも一新されていきます。もちろん進化を続けるオーナーばりからも満を持して「アジ弾丸」「「豆アジ弾丸」が発売。自他ともに「最強」と呼ぶアジ専用のジグヘッド。その差は歴然、食い込みやすいデザインやヘッド形状、キーパーの設置やアイの位置などカタログスペックも是非ご覧いただきたいと思いますが、とにかく「掛かり」が違います。「はり屋のはり」この凄さも是非皆さんに実感いただければと思います。
「その先には…?」
新たなターゲット(魚種)、釣りかた(アプローチ)の工夫から今日も最先端のモノづくりが行われています。今では「とにかく手軽でカンタン!」っと言われるライトゲームですが、そこに至るまでの様々なアイデアと技術の革新があってこそ。「そんなもん腕やがな。」っと往年の先輩釣り師の皆さんには叱られるかも知れませんが、先鋭のライトゲーム、ことメバルやアジなどは事実この「道具の進化」で釣れるようになった魚たちであります。先鋭化されたものが時間と共に普及し、それがより一般化・カジュアル化してより一般的な釣り人に浸透していく。でもみなさん気をつけてください。たとえ小物釣りとは言えども相手は「自然」。侮れませんので!まずはとにかく基本をマスターし、セオリーを学び、そして状況に対応していく。「タケダさん、アジもメバルもなかなか釣れませーん?」っと嘆く皆さんも多いはず? 当たり前です。魚は釣れる時にしか釣れてくれませんので! 要は行く日・行く場所・行く時間・そして釣り方が合ってないだけ。「だって今日しか休みないんですもん?」そんなこと魚にとってはなんの関係もありませんので!(笑)
釣れない日もたくさん経験すること。するとまた新たな発見があったりしますので。釣りは無情な自然を相手に「考える遊び」。だから完璧な答えなど出るはずもなく僕のトライ&エラーも続くのです(笑)。
プロフィール…武田栄(たけだ・さかえ)1967年大阪市生まれ
カルティバフィールドテスター /Go-Phish代表/ 釣り研究家
幼少期の釣りからルアーに目覚めバスフィッシングはもちろん、10代の頃よりいち早く海のルアーゲームに精通、その後様々なスタイルを構築。20代では釣りと同じく楽器(ドラム)演奏にも没頭(2000年ビクターエンターテインメントよりメジャーデビュー)。現在は釣りとともに地元関西の個性派グルーヴァーとしても活躍中。関西最古参SW釣りクラブ会長、老舗ルアーメーカー勤務を経てプライベートブランドGo-Phish(ゴーフィッシュ)を設立。自身の開発アイテムはもちろん様々な釣具メーカーとの企画人気アイテムも多数開発。雑誌メディアでもおなじみ愛称はタケちゃん。その明るい人柄にファンも多い。趣味は「おしゃべり」。合言葉は「ゲームフィッシュは出かたが命!」「楽しくなければ釣りじゃない」