第2話【釣りと釣り師とルアーマン】
釣り。
こと海の釣りではここ数年の大流行から現場ではいろいろと情報も錯綜しているようで…。
ここ15年ほどで何が変わったかといえば「釣りがとても身近になったこと」か?
わずか15年前、僕が35歳くらいの時のことを思い起こせば海の釣りはしっかりとしたすみわけがあって「趣味として(エサ)釣りを楽しむ人(釣り師)」、僕のような「海のルアーマン」、そしてファミリー層を中心とした「レジャーな人たち」に分かれておりました。
それが今では「全国みんな釣り人!」的盛り上がり?
理由はシンプル、結果良くなったかどうかは別としてルアー釣りがとんでもなく普及したこと。
釣り方が全国に広がりその先々で発展し始めたこと、ショアではより他魚種、しいては大型の魚種が狙えるようになったこと。
そしてオフショアでも同じく魚種と釣り方が増えルアーというよりはいわゆる「釣り」として定着し始めたこと。
釣りが人気で盛り上がることは僕も喜ばしい事ではあるけれど、すっかり行き過ぎている傾向も見受けられるのが今の怖いところ。
まぁ人にもよるでしょうが僕は基本的に人の居ない所で釣りをするのが好きな性分なので昨今の釣り場の混雑具合にはホトホトなところもあります?
「釣れる」っと錯そうする情報から釣り場の極所化も著しく必然的にトラブルになるケースも増えていると聞く。
皆さん覚えておいてください!
→釣りに携わる全員が同じ想いでいなければいけないこと。
「釣り場と資源は実は乏しく限りがある」
「釣り人の立場は非常に弱い」
釣りをする側もさせる側もこの二つを絶対に、絶-っ対に忘れてはいけない。
ついつい僕がいつも行う釣りの話しになるけれど、オカッパリ釣り場は意外と少ない。
楽にアクセスができる場所と自由に釣りをさせてもらえる場所。
また潮の流れや底質、底の起伏などたまにカヤックなどから釣りをすると一級のオカッパリ場所がなぜ一級たるかを痛感する。(結局いい場所なんよねー!(笑))
そしてこの二つの要素から改めて驚くことは「魚は人工物(マンメイド)が好き」だということ!
何の知識もなく太平洋や日本海に面したごく自然の沿岸で一日釣りをしてみればすぐにわかるが特に釣り人が多い関西などではよほどの好条件か偶然以外、いつもコンスタントに釣れることはまず少ない。
そもそも世界的に見ても大きな海洋に面した海岸では沖合での漁が基本。
だだっ広い海では魚の通り道は不明確なのである。
特別な専門知識がある訳ではないけれど想像できる主な近海漁場といえば海流のぶつかる場所、大きく地形が変化する場所、そして何より「入り江のある内湾部とその入り口」となる。
東京湾や大阪湾などでスズキ(シーバス)が良く釣れる理由もライトゲームが普及した瀬戸内や僕の地元大阪南部の泉南エリアにメバルやアジが多いことも同じ理由。
もともと幼魚が育つ内湾部は成魚(大型魚)こそ少ないものの発育中の中・小型のストック量はハンパではない。
変化する地形とよく通る潮、流入する河川との広大な汽水域。
要はエサが多く環境も比較的安定的でより多くの魚が育ちやすいのである。
でここからが面白くもあり厄介でもあることだがこの内湾部は全国ほぼ整備されていて、港はもちろん整備された護岸や波消ブロック、小さな石積み堤防や常夜灯などはより魚が集まりやすくまた釣りもしやすいということ。
これが嬉しくもあり問題を引き起こすきっかけにもなる要因。
近隣住民や港湾作業員と釣り人とのトラブルなどはあってはならず聞くに堪えないことではあるが現実に起こる。
また釣り人が増えれば魚だってそういつまでも釣れ続けてくれるわけではない。
僕もここ30年で無くなった釣り場を数多く目にしてきたが思い返せば実に悲しい事である。
魚が釣れにくくなったことやモラルやマナー上の問題については各方面の方々や釣り人の皆さんからも度々意見を聞くが細かなルール決めなどと言われても細かくまでは決め様もなければ全員が守るとも思えない。
でも何かしておかないとそのうち本当に釣りが出来なくなるんとちゃうやろか…?っと不安は尽きない。
で、あるからしてここでタケダさんからの提唱!
「ルールは先に作ってはいけない」
肝心なのはあくまで「釣り人の意識」であるからしてこの意識を高めよう。
要はみんなどんどん釣りが上手くなること、これが答えです(笑)!
渓流に行っても磯へ行ってもどのジャンルでも釣り師(=エキスパート)はもめごとは起こさないしゴミも出さない。
これから本気で釣りを楽しもうとする皆さんへ言っておきます。
「出来るだけ人に見られず、釣りをした形跡を残さないように帰ること。」
これだけで多くの問題は克服できます。
釣り人は釣り師を目指すこと。
ルアーマンはよりエキスパートに近づくこと。
まっ、センスもとても必要なのですがまずは行動する前にじっくり考えましょう。
時代は変わりました。
だからみんなで守っていきたいと思います。
そして僕はルアーマン。
この定義も今では大きく変わってきてしまっていて今さらどうのこうのもないけれど信念は大事にしてます。
元来釣りは「洒落のわかる大人の遊び」、ことルアー釣りにおいては尚のこと。
紳士的であること、静かに釣りをすること、良いものを使うこと、道具と釣り方にこだわりを持つこと、自分の世界と仲間を大切に想うこと。
これがカッコいい「ルアーマン」の理想。
そして今や世界も席巻するほどのジャパンスタイル。
道具や釣り方の普及に合わせてクールジャパンな「日本のゲームフィッシングスタイル(姿勢)」なるものも構築・提唱していきたいと思っています。
…こんなに楽しい遊びがいつまでも楽しめますように!!
プロフィール…武田栄(たけだ・さかえ)1967年大阪市生まれ
カルティバフィールドテスター /Go-Phish代表/ 釣り研究家
幼少期の釣りからルアーに目覚めバスフィッシングはもちろん、10代の頃よりいち早く海のルアーゲームに精通、その後様々なスタイルを構築。20代では釣りと同じく楽器(ドラム)演奏にも没頭(2000年ビクターエンターテインメントよりメジャーデビュー)。現在は釣りとともに地元関西の個性派グルーヴァーとしても活躍中。関西最古参SW釣りクラブ会長、老舗ルアーメーカー勤務を経てプライベートブランドGo-Phish(ゴーフィッシュ)を設立。自身の開発アイテムはもちろん様々な釣具メーカーとの企画人気アイテムも多数開発。雑誌メディアでもおなじみ愛称はタケちゃん。その明るい人柄にファンも多い。趣味は「おしゃべり」。合言葉は「ゲームフィッシュは出かたが命!」「楽しくなければ釣りじゃない」